ノートパソコン「発火事故」の原因とデータ復旧
自宅にいた場合、起きていればスグに消火可能ですが、仕事などで長時間の不在時や就寝中に充電していたバッテリーが爆発してしまい、気が付くのが遅くなれば、モバイル機器の被害だけに留まらず、建物や人も被害を受ける甚大な事故につながる可能性があります。
- 突然の爆発音とともにノートパソコンが焼けた
- ベッドの上で充電中のノートPCが火柱を立てて燃え始めた
- 爆発した電池から跳ね飛んだ液体で手足に火傷を負った
- 充電中にスマホが延焼
結論から先に言えば、外出中はリチウムイオン電池搭載のモバイルバッテリーは充電しないほうが良いということです。
目次
安価なモバイルバッテリーの普及も要因
ノートパソコンやタブレットPC、スマートフォンに搭載されたリチウムイオン電池などのモバイルバッテリーを原因とする発火事故は年々増加傾向にあります。
例えば、発火事故は、直近2012~2016年の5年間でも累計274件発生。うち半数以上の製品では製造そのもに原因がある可能性があります。
リチウムイオン電池の事故件数区分
デバイス区分 | 発火事故件数 |
---|---|
ノートパソコン | 110件 |
モバイルバッテリー | 108件 |
スマートフォン | 56件 |
その件数は年々増加しおり、特にモバイルバッテリーの事故件数が大幅に増えてきている状況です。
リチウムイオン電池は、ノートパソコンだけに限らず、iPAD(アイ・パッド)やスマートフォンなどの多数の商品に内蔵されています。
充電後あたりの駆動時間は年々、長くなっていますが、使用頻度によっては、1日の間に何回も、充電をしないと使えないケースもあります。そのような充電に便利なのが、モバイルバッテリーです。
ですが、ネット通販などで海外製の安価なモバイルバッテリーが購入できる一方で、リチウムイオン電池は、ほかの電池と比べて高電圧でエネルギー密度が非常に多い特徴があります。つまり非常に危険な性質を持ち合わせているということです。
モバイルバッテリーの「危険信号」
モバイルバッテリーに使用されているリチウムイオン電池には危険信号はあるのか?
このリチウムイオン電池の危険信号には幾つかのパターンが存在します。
- 異臭
- 膨らむように変形し始めた(スマートフォンの場合、顕著)
- 充電がなかなか満充電にならない
- 充電中に発熱するようになった
スマホのモバイルバッテリーが変形したり、膨張し始めたら「危険信号」と覚えておきましょう。
膨張し始めると、画面が盛り上がったり、背面が膨らみ始めるので、見るだけで分かります。
また顕著に充電が遅くなった場合には、劣化が進んでいるので注意が必要です。
リチウムイオン電池爆発事故の理由
リチウムイオン電池の爆発事故には、下記のような原因が考えられます。
- リチウムイオン電池の寿命(劣化)
- ぶつけたこり、圧力などによる変形
- 高温になる場所での放置
- 寒冷な環境で充放電
- 落下・衝撃を加えた
- 保護回路の故障
- 保護回路の設計上の不良(異常電流の発生)
- 製造時にセルへの異物の混入
小型でも高性能な反面、電池の正極と負極に使われる電解液は可燃性の物質を大量に含んでおり、モバイルバッテリーなどで使用されるリチウムイオン電池は消防法上では、灯油や軽油と同じグループとなる40度以下で引火しやすい製品群に分類している程です。
落下や衝撃は元より、製造過程で電気を通しやすい不純物の混入で正極と負極が触れ合ってしまえば、ショートします。
一瞬の発熱で、たちまち爆発が発生し、液体が飛散、燃え広がってしまう危険性があります。年々、エネルギー密度を上げ、小型でもより高出力なリチウムイオン電池の搭載が増えています。
複数のITデバイスを持っている場合、一度に充電できるという利便性が上がる一方で、エネルギー密度と安全性はトレードオフの関係にあります。エネルギー密度が上がれば、上がるほど、衝撃や落下、不純物の混入などは厳禁になるため、製造工程も含み、落下や衝撃にも強い構造が必要になってきます。
特にメーカーが不明な海外製は、性能を追求するため、安全性を無視した作りになっている懸念があります。
しかし、大手製造メーカーなら安心なのかといえば、そうではない事故も多くあります。例えば、2016年に韓国サムスン電子のギャラクシー携帯で発火事故が相次ぎました。
アップルやソニー(SONY)、パナソニックやシャープなどの大手メーカーのモバイルバッテリーでも、事故が報告されています。
そのため、リチウムイオン電池そのものが危険なのではないかという、指摘も数多く上がっています。
そのような事故背景から日本国内においても、経済産業省が2019年2月からPSE(電気用品安全法適合を示す)表示のない機器の流通を禁止する施策を決定しました。
PSE(電気用品安全法適合)
一方、モバイルバッテリーの事故多発を受けて経済産業省もようやく動きだしました。これまでリチウムイオン電池そのものにはPSEマーク(電気用品安全法適合を示すマーク)表示等の規制が行なわれていましたが、その電池を組み込むモバイルバッテリーは規制の対象外という措置であったため、事故発生を抑止することができない状態になっていました。
しかし2019年2月より、ようやく見直しを行い、規制対象になりました。2019年2月以降は、PSEマーク付きのモバイルバッテリーを選ぶことで、事故の発生を抑止できると考えられています。この改正により、今後モバイルバッテリーを製造・輸入する業者は、電気用品安全法の技術基準に適合していることの確認が実施されます。
また検査記録の保存が義務付けられるので、モバイルバッテリー販売業者がPSEマークがない製品の販売ができなくなります。
ですが、この改正も、適用は平成31年2月1日からとなっている盲点があります。つまり、それまでの期間は現在市場に流通している「PSEマークなし」の製品がそのまま市場で流通し続けて販売されることになります。
さらに、PSE(電気用品安全法適合)適用後も、モバイルバッテリーは「危険な電気を蓄えた精密機器」であるいうことを利用者が理解している必要があります
ノートパソコンのバッテリーが発火したらデータ復旧は不可能?
ノートパソコンのバッテリーが発火したらデータ復旧は不可能という噂がありますが、実際には半分、本当で、半分は嘘です。
ノートパソコンの主記憶メディアは、今日現在、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD 【 Solid State Drive 】 ソリッドステートドライブ、eMMc【 embedded MultiMediaCard 】の3種類が主です。
ipadやタブレットPCの多くは、eMMcを採用しています。SSD、eMMcはメモリーなどのフラッシュドライブに分類されます。近年の軽量、薄型ノートパソコンでは、SSDの採用率が高まっています。
ですが、一方でSSD(ソリッドステートディスク)、eMMcは、電気的に読み書きを行っているため、火災やショートなどの電気的なトラブルに非常に弱い側面があります。SSDやeMMcは落下や衝撃などに強く、軽量化されているメリットがある一方で、何らかのトラブルが発生した場合のデータ救出が難しいデメリットが存在するのです。あまり知られていませんが、今後、普及することが予想されるため極めて重要なポイントです。
一方で、古くから利用されているHDD(ハードディスクドライブ)は、記録面であるプラッターがアルミケースに覆われているため、外部が焼けても、基盤が焦げてしまっても、データを抽出できる可能性があります。泥水に浸かってしまっても、水没しても、HDD(ハードディスクドライブ)であれば、データを抽出できる可能性は残っている訳です。大容量なデータを保存するサーバーやクラウド、USB外付けHDDなどではハードディスクが残り、パソコンやタブレットPCなどはSSDやeMMcという風にそれぞれの特性に合わせた使用方法になることが予想されます。